Wii U宣伝動画『アダムちゃん』は、京都の企業と劇団のタッグ!

劇団「ヨーロッパ企画」制作の動画が突然スタート

12月25日(木)、クリスマスの夜に任天堂の公式サイト内にて突如公開された、Wii Uの宣伝らしき動画『アダムちゃん ~宇宙人が京都にホームステイ~の第1話「はじめての出会い」。5分弱の紙人形劇となっています。

制作は京都を拠点とする劇団「ヨーロッパ企画京都に本社を置く任天堂が、同じく京都にある劇団と手を組んだと言えるでしょうか。ここ10年ぐらい、ヨーロッパ企画の本公演のほぼすべてを見にいっている私にとって、ちょっと感慨深いような気がします。

映画「サマータイムマシン・ブルース」などが有名

ヨーロッパ企画に関して最も有名なものといえば、おそらくは映画「サマータイムマシン・ブルース」(2005年)や「曲がれ!スプーン」(2009年)ではないかと思います。ともに、ヨーロッパ企画の舞台が原作となっています。

劇団の結成は1998年なので、既に15年以上の歴史があります。俳優の皆さんは、名前が大きく出ることは少ないですが、全国放送のドラマにもちょくちょく出演しています。また、劇団の代表である上田誠さんもドラマやアニメの脚本を手がけていたりします。

突飛な設定の群像コメディが得意

ヨーロッパ企画は、群像劇が得意と言われています。しかし、堅苦しさやメッセージ性はほとんどなく、突飛な舞台設定の中に放り込まれた人間たちのおかしな行動やそのやりとり、かいま見える哀しさなどがおもしろいコメディがほとんどです。ですが、その中に何気ない、普遍的な人間性が描かれているのが魅力の一つです。

ヨーロッパ企画では、ショートムービーの映画祭といったイベントやWebラジオなど、舞台の他にも俳優やスタッフも含めてさまざまな活動をしています

同じ紙人形劇形式で、既にNHKで番組を作っています

今回の動画『アダムちゃん』は「ペープサート」と呼ばれる紙人形劇の手法を使っています。ヨーロッパ企画ではこの手法で既に番組を一つ作っています。「タクシードライバー祇園太郎」(2011~12年)というショートドラマで、NHKワンセグ2、そしてNHK Eテレなどでも放送されました。実際の京都の風景をバックに、主人公である個人タクシーのドライバーの奮闘ぶりをコメディタッチで描くというものでした。こちらも1話5分ほどの長さで、最終的には「シーズン2」なども含めて合計40話以上が制作されています

テレビゲーム的なモチーフも多い

ヨーロッパ企画の舞台などでは、テレビゲーム的なモチーフがちょくちょく見られます。

私が初めて見たヨーロッパ企画の舞台は「ロードランナーズ・ハイ」(2002年)でした。テレビゲームなどで散らかった寮のロビーを、男子大学生たちがダラダラ掃除するだけの話なのですが、この設定だけで2時間ずっと笑えるという舞台でした。ロールプレイングゲームの王様と勇者のようなやりとりを繰り返し、掃除がなかなか進まないなど、特に今30~40歳代の男性なら共感しやすいような内容でした。

近年の舞台だと、「ボス・イン・ザ・スカイ」(2009年)では、ドラゴンを倒しにいった集団が森で夜を明かしているけれど、少し遠くで行われている野外ロックフェスが、みんな気になって仕方がない、という話でした。

また、上田誠さんが脚本として参加したドラマにも、現実の世界に現れたドラゴンを退治しに行くという「ドラゴン青年団」(2012年)や、テレビゲームを題材とした「ノーコン・キッド」(2013年)があります。

実は4年越し? 任天堂とヨーロッパ企画

実は今回の動画以前にも、任天堂とヨーロッパ企画のつながりがありました2011年1月に経済産業省などが主催したイベント「コ・フェスタPAO」にて、任天堂の宮本茂さんと、ヨーロッパ企画の上田誠さんたちがトークショーをしています。

そのニュースを知った時、「同じ京都なんだから、なにか絡むようなことはないかな」と私は思っていましたが、その約4年後に今回の動画が公開されました。先のトークショーとは特に関係がないと思いますが、自分がうっすら考えていたことが現実になって、少し驚きました。

『アダムちゃん』は今回が第1話ということもあり、ストーリーの導入部分とMii作成の説明で終わりました。「第1話」となっているので、この先も続いていくはずです。サイトのデザインも含めて、任天堂よりもヨーロッパ企画の色が強いように見える『アダムちゃん』が、今後どのように展開していくのかが楽しみです。

ちなみに、今回の動画では「ベーシックセット」の方が登場していました。ゲームが同梱されている各種「プレミアムセット」だと、後々ゲームの入替があって汎用性がなくなるから、ということでしょうか。そのセット、Wiiリモコンは含まれていないぞ、キョウスケくん。